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鳥井閑の実践的作詞作曲講座

鳥井閑の実践的作詞作曲講座in2BEAT
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-10- 酒場の女
「前回は別れがテーマでしたが、そうすると次のテーマはやはりこれしかないだろう。ということで、今回のテーマは酒場の女です。」
「綾ちゃんの将来を歌ったものですね。」この言葉に、綾ちゃんは負けじと
「え、どんなんなんだろうな、どんな豪邸に住んでいるんだろうね!」と強い調子で言い返した。そんな綾ちゃんにはお構いなしに鳥井閑は話を続ける。
「最初の曲の題名は"もう一曲うたわせて下さい"という曲です。昔、横浜の歌を歌わせてくれるお店でこれを歌おうと思いまして、そこでマスターに『もう一曲歌わせて下さい』と頼んだんです。マスターは『どうぞ、歌って下さい。曲名は何ですか』と聴くものですから、僕は『"もう一曲歌わせて下さい"』と言いました。マスターはまた『どうぞ、それで曲名は何ですか』とききます。しつこいようですが、ここでまた『"もう一曲歌わせて下さい"』と言いまして、何度かそれを繰り返しているうちに、しまいにはお店の人が怒ってしまいました。」
 鳥井閑はそんなおちゃらけたエピソードを披露してから歌い始めた。

  ♪もう一曲歌わせて♪

  もう一曲歌わせて下さい もう一曲だけ
  今夜はとても淋しいから 思い出の歌、歌っていたい
  今では誰も知らないけれど 昔はこの店の人気者
  生まれつき声が良かったし 節回しなんて珍しくてね
  どんな歌でもこなしたものよ 調子に乗って自惚れていたわ
  だけど今夜は淋しいから もう一曲歌わせて下さい

  もう一曲歌わせて下さい もう一曲だけ
  今夜はとても悲しいから 全てを忘れて歌っていたい
  今では声も潰れたけれど 昔はこの店の人気者
  それから後は聞かないで いろんな苦労なめてきたわ
  拍手なんて期待しないで 心の歌を歌ってみたい
  誰かにわかって欲しいから もう一曲歌わせて下さい
  もう一曲歌わせて下さい

「綾ちゃんの将来が見えてきましたね。」鳥井閑、相変わらず綾ちゃんをからかう。
「やだそれ〜」本気でいやがっている綾ちゃんの様子に周囲から笑いが起こった。

「じゃあ、次は実在の人を歌ったものです。昔によく行ったスナックのママなのですが、この人が、とくに美人というわけではないのですが、とても人気のある人で、気は強いのだけれども実はやさしい心の人でした。そんな女の人を歌った歌です。」

  ♪良江の詩♪

  粋がった女だと人は言うでしょう
  常識なんて気に止めないように見えるでしょう
  朝日が東に昇るように 私は自分を偽ることが出来ません
  心のままに突っ走り いつも調子に乗り過ぎる
  海に憧れ、海を見て なお山に憧れる
  こんな私、わかるでしょうか
  自由な天地求めつつ いつしか深く傷ついて行く
  そうです、私は馬鹿な女です

  気まぐれな女だと人は言うでしょう
  男の中を泳いでいるように見えるでしょう
  川が海へ注ぐように 恋する私は一途な女になります
  あなたは全てを私に賭けて 風のようにさらって欲しい
  あなたの胸で眠っていても なおあなたの夢を見る
  こんな気持わかるでしょうか
  実らぬ恋と知りながら いつしか情に流されて行く
  そうです、私は弱い女です

 歌があり、恋があり、そんな酒場の女の人生は確かに詩になりやすい。綾ちゃんの将来もそんなドラマチックなものなのかもしれない。さて、今日も鳥井閑の講座の後で2BEATのミュージックタイムが始まった。カウンターに入った綾ちゃんが準備をする。
「それでは、歌わせてもらいます。」 マイクを調節しながら綾ちゃんが言った。
「曲名は何ですか?」 と鳥井閑が聞いた。
「もう一曲、歌わせて下さい!」

文責 ゆうき

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