今回で9回目となる鳥井閑の作詞作曲講座も後半戦へ突入した。今日のテーマは別れである。歌のテーマとしては恋愛と同じくたくさん見られる。
「戦後流行った歌500曲を調べますと、その45%、約半分が別れをテーマにしたものなんですよ。」と鳥井閑。
「そうなんですか?」突然あげられた数字に一同が思わず信じかけた。
「冗談です。」 |
♪サマーオレンジ♪
別れの坂道 お前は下りて行く 振り向きもせずとぼとぼ下りて行く
その時、俺は奇跡を信じた 何かが起こり愛は戻るだろう
二人とも お互いに 意地を張るだけ
本当は、仲良くやって行けるのに
ちょっとジョークが過ぎただけさ
サマーオレンジ、一つ 誰かが落とした
サマーオレンジ、一つ 坂道転がる
その時、俺は夢を見た サマーオレンジ拾いお前は引き返す
見つめ合い 分かり合い 涙溢れて
走り寄り 荒っぽく抱きしめ合う
長い別れの後のように
サマーオレンジ、一つ 坂道転がる
サマーオレンジ、一つ お前は拾った か細い腕で、投げ返したよ
力不足で届かない サマーオレンジ、再び 坂道転がる
不規則に バウンドして 今度は捕れない
ブロックにぶつかって 砕け散ったよ
まるで、二人の愛のように
サマーオレンジ、一つ 坂道転がり 初夏の一日は暮れて行く
二人の愛はもう帰らない
(Refrain)
|
以前のテーマ「季節感」に入れる事も考えたという曲だそうだ。爽やかなメロディーにのる別れの曲。
「お気づきになった人もいらっしゃるかと思いますが、この曲は実はメロディーラインがあまりしっかりしていないです。自分で作っていて凄く好きな歌だったから、早く歌いたいなあ、と思って適当なところで仕上げてしまったのですよ。」
なるほど。けれども、不安定なメロディーラインであるからこそ逆に、別れというテーマを上手く表現できるのかもしれない。完璧を目指すだけがすべてではないようだ。
−不規則に バウンドして 今度は捕れない
このフレーズが鳥井閑の最も好きな部分であるらしい。不規則なバウンドと不完全なメロディー、恋愛の不安定さを表現するにはもってこいである。
|
♪朝日輝くなら♪
日はまた昇り 小さな丘照らす
丘の上の小さな 家もみんな輝く
こんな明るい秋の朝に 何故二人は別れて行くのか
朝日は二人に輝くはずなのに
お前は心閉ざし 光遮る 小さな瞳に涙溢れる
街は穏やか アスファルト眩しく
駅へ急ぐ人の顔はみんな爽やか
こんな素晴らしい朝の道を 何故一人で戻って行くのか
この道は明日に続くはずなのに
お前は分けも言わず 一人悲しむ 小さな胸がなおさら淋しそう
愛は立ち去り 何にも残さない
せめて一つ祈ることは お前の幸せ
僕は暗闇歩いてもいいさ だけどお前は朝日を浴びて
歩いてくれと祈りながら
朝日よ、また輝くなら 小さな丘と小さな家と
お前の小さな胸に輝けよ
|
穏やかでゆったりとした曲。別れる二人のゆれる気持ちと、それでも相手を思いやる切ない気持ちが交差している歌であった。
そして今日は久々に3曲目を歌う鳥井閑である。
|
♪ブーケ 君に捧げる♪
ブーケ 思い出が揺れている 君はいつも微笑んでいた
二人は丘に上り 変わらぬ愛を誓った
運命の悪戯(いたずら)が二人を引き離すなんて 気づくはずもなかった
また会う日を夢みて贈る 花束一つ
ブーケ 水に浮かべれば ブーケ、岩に打たれても
ブーケ 強く流れて 遠く離れた君の元へ着くさ
ブーケ 美しい季節だった 薔薇の花が咲き乱れていた
君は花束を作り 歌を口ずさんだ
人生が好きだ、と言っていた君はいま どんな人生送っているのか
君の幸せ祈って贈る 花束一つ
ブーケ 空に投げ上げれば ブーケ、花びらは舞い
ブーケ 風に流れて 遠く離れた 君の肩に降るさ
(Refrain)
|
鳥井閑は強くギターをかき鳴らして歌い上げた。店内一杯に鳥井閑の声が広がった。一つのテーマでもこれほどいろいろな表現の方法があるものなのだと、感心しながら拍手を送った。力強い歌に他の人の受けも良かったようだ。
「イエ〜イ、トリカンさ〜ん」という綾ちゃんの掛け声と、みんなからの拍手が鳴り止まなかった。
文責 ゆうき
|