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鳥井閑の実践的作詞作曲講座

鳥井閑の実践的作詞作曲講座in2BEAT
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-8- 軽快なテンポ

「今日のトリカンの曲はすごいのよ、すごくイカレた感じなの。」
 2BEATでカレーペンネを食べていた私にママが言った。イカレた、とはどういうことなのだろうか、たまねぎの深い甘味のあるカレーを味わいながら私は考えた。近くで鳥井氏は今日もせっせとアルコールをチャージしている。
「いやあ、こんな歌は酔ってないと歌えないですよ。」というのがその理由だそうだ。今日のテーマは"軽快なテンポ"ということだが、ママの言葉を聞く限りではただ単に爽やかな歌ではないようである。
 「じゃあそろそろ、酔いがまわっているうちにやってしまいましょう。」と、鳥井氏がカウンターに入った。
 「今日は前回とは一転して楽しい曲をやります。」
軽いノリのリズムが流れ出す。最初の曲はサザンがテーマの曲である。

  ♪サザン狂い♪

  チャコ海(かい) 恋濡れ 愛しのエリー
  女だてらに めちゃめちゃうまい おーミスブラニューディ
  サザンを歌えば ご機嫌さ
  舌もつれさせ 訛り(なまり)利かせて 得意顔
  うまく決まれば うまく決まれば お腹抱えて大爆笑
  涙さえも浮かべて笑う
   そんなに笑ったら皺(しわ)になるぜ
   うそー、わたしゃ面(つら)が厚いのよ
  抱きしめた俺の腕の中で もがきながらも歌ってる

  餃子ライスに レバニラ付けて
  お金のないときゃラーメンライス 勿論大盛り
  これが彼女の昼飯さ
  食欲旺盛 止まるところを知らない
  いつの間にやら いつの間にやら つられて俺も大食漢
  腹の具合がおかしくなったよ
   そんなに食ったらバッチリ太るぜ
   うそー、わたしゃ痩せの大食いよ
  デザート代わりに飯より好きな サザンの歌歌ってる

  サーフィン・ボード ルーフに積んで
  湘南海岸ぶっ飛ばす 最高ナウいぜ
  ウェット・スーツもビシッと決めて
  気さくな笑顔で海辺の人気さらってる
  ちょいと乗せれば ちょいと乗せれば サザンを歌って大喝采
  これじゃ海には入れません
   お前、本当にサーフィンやるのか
   うそー、これはほんのファッションよ
  サザンの歌の舞台衣装さ ザザンにゃ海辺が良く似合う

面白おかしく歌う鳥井氏に店内から掛け声を笑いが起こる。
「サザンが大好きなお姉さんを登場させて歌詞を作ってみました。」と鳥井氏。
「続きましてはビギナーズラックの曲です。」
またまたおかしなテーマの曲である。今日の鳥井氏はすっかり狂ってしまったのだろうか?

  ♪ビギナーズラック♪

  お前の白い指が5番、8番指していた 俺は迷わず馬券を買ったよ
  お前とまともな暮らしがしたい 競馬もこれでお終いだよ
  有り金はたいて区切りをつけよう
  ビギナーズラック ビギナーズラック
  ところが大穴飛び込んで あっという間に大金持ちさ
  たちまち病気はぶり返し 止めるどころかのめり込んだよ
  それからしばらくバカつきで さっさと仕事も止めちまったよ

  お前の大きな目がじっと思いつめていた つきも長くは続きはしない
  お前は優しい女だから 元手を稼いで上げるわと
  水商売に入って行ったよ
  ビギナーズラック ビギナーズラック
  素人っぽさがバカ受けで あっという間にナンバーワンさ
  たちまち生活派手になり ちょっとどころかのめり込んだよ
  それからしばらく優雅な暮らし お前の稼ぎで暮らしていたよ

  お前の白い肌がいつの間にか荒れてきた 夜の仕事がいい訳ないよ
  俺は相変わらず競馬通い さすがのお前も愛想尽かして
  男を作って逃げて行ったよ
  ビギナーズラック ビギナーズラック
  追いかけて行って取り返す 勇気も気力もありゃしねえ
  あっという間に時は過ぎ 若葉の季節がやってきた
  ぼんやり眺める大レース 今じゃおけらで馬券も買えない

 まさに軽快なテンポで、そしてちょっとイカレた歌だった。
「今日の歌の歌詞は面白いですね。」とマスターが言う。
「そうですか?まるで自分のことを歌っているようですがね。」と鳥井氏が答える。
う〜んそうなのか、ギターを持った温和な雰囲気の鳥井氏、その姿からは競馬狂いやヒモ生活など想像がつかない。そういえばこれまでの鳥井氏の歌の中で、恋愛が題材のものもいくつかあるが、どれも甘く切ない物語だった。若い頃のことですよ、と言われると納得してしまいそうだが、鳥井閑の人生とはいったいどういうものなのだろうかという疑問がわいてくる。歌を通して鳥井氏本人に興味をひかれる結果となった。これは鳥井氏の策略なのかもしれない。
 しかし、自分をネタに詩を書くと言うのはありのままの自分を人前にさらけ出すことでもあるだろう。それには開き直りにも似た覚悟が必要なのではないかと思う。ミュージシャンへの道は険しいと実感させられた今日の鳥井氏の歌であった。

文責 ゆうき

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