岩田 雅子
ZAN00466 2001/05/15 13:24
題名:フィリックスより
Date: Tue, 15 May 2001 13:25:00 +0900
最近、あったうれしいことを皆さんに報告します。
先日、同業者の女性に私の失恋話をしていた。
振られたことをまるで昨日のように覚えている。
私は男に冗談半分で、「たった今、店の窓から飛びとりて死んでやる」と言った。
すると男は「君のそういうところがもう、ついていけなくなったんだ」と、「えーヒサン、へえ、世の中にそこまで言われる女っているんだ」彼女は目がキラキラしてきた、
本当にうれしそう、私は昔話をするんじゃなかったと後悔した。
「わかったわ、あなたが他人に対して、優しいわけが、雅子ちゃんて案外すごく優しいじゃない、それって男の人にいっぱい振られたからなのね」そこへいくとさーと彼女は哀しげに眉をよせたが口が笑っている。
「私ってダメなのよね。子供の時から、男の人にチヤホヤされていたでしょ、銀座にはいってから、これまたモテまくっていたわよね。だからさ私って人に対して優しくないのよ、雅子ちゃんみたいになれないのよね」私がムッとしたのはいうまでもない。
皆さんはわからないと思うけど、私は男性とつきあうと、尽くして、甘やかしていい気にさせてしまう、その結果、手ひどいめにあうことが多いわけですね。が、こんな風に書いたりしても、「失恋の記憶」というのは、とても辛い昔のことだって胸がギュっと痛くなってしまう。
「男なんてもう信じられない」と後ろ向きな気分にはならなかったけど、私は嫌われたんだという劣等感からはずっと逃げられなかったような気がするところが、つい最近、新規のお客様と話していたら、その最中、彼はこう言った。「僕、ママの昔の彼氏、よく知っているよ」「え、誰のこと?」「彼から2時間もママのことを聞かされました。すごく好きだったと切々と言っていたよ」私はすんでのところで涙をこぼしそうになった。
ずっとずっと私は彼にフラれたと思っていたのであるが、向こうは向こうで違うというのである。
「ううっ、嬉しい」長年のうっせきが一気に晴れたような気がする私であったそれから、フラれたといじいじ覚えているのはやめよう。
フラれたなんてもう、言わない。
こういう場合「失恋」という便利な日本語がある。記憶なんて自分でいいように作りかえればいいんだ。
誰かに「うそつき」と咎められるわけじゃない。
「私は生まれつきモテていたんだ」とにかく、そう思う、そう、信じる卑下した過去から、明るい未来が生まれるはずないもの。 |