岩田 雅子
ZAN00466 2000/11/27 02:51
題名:フィリックスより
今年最後のメ−ルです。
私は『焼肉』を前にすると人格が変わるらしい。 あれは、半年ほど、前のことになる。店が終わったあと、あるお客様と銀座にある 有名な焼肉店に出かけた。ここはとても高級なところで、お肉も上等なものばかりだ。
ところが、彼は、あまり、肉には手をつけないで、水割りをちびりちびりと飲む。
そうしながら、いろいろお話をしてくるのだが、私はほとんどうわの空。
私の大好きなカルビがほどよく焼けて、ジュ−ジュ−と脂の泡をたてているではないか 。これをどうして見逃すことができよう。
『あ、そうですか』『へえ!ほんと』私は適当にあいづちをうちながら、 次々肉を口の中に入れる。気がつくとお客様の冷たい目がそこにあった。 あの後、かなり、気まずい雰囲気が流れたのではないだろうか。
それから、一度も、彼はフィリクスに来店してくださいません。
ところがやはり、焼肉の魅力には勝てず、また、焼肉屋に出入りをしている私。
美味しいし、ガムをくちゃくちゃ噛みながら、帰り道を歩く快感は他では得られない。
私はつい油断していまい、同伴出勤の時に焼肉屋に行くという愚挙をおかしてしまったのである。 お腹がペコペコだったせいか、その日のカルビはことのほか、美味しく
それをおかずに丼一杯のご飯をたいらげてしまった。
そのうえ、カルビス−プも 飲んでしまった。
『よく、食べるよな、俺、見ているだけで胸がいっぱいになっちゃう よ』 お客様が皮肉まじりに言った。
男というのは、どうして、女が焼肉を目の前で 食べるのを嫌がるのであろうか?(皆さんのそうですか?)
『あ−ら、いけなかったかしら』私は思わず、きっと睨む。
私は、このお客様にかなり好意をもっていたが、この一言でかなり減点をした。
いや、彼が悪いのではない。焼肉3人前を丼一杯のごはんとカルビス−プを食べた私 がいけなかったのね。
この時、かなり後悔していたのに、先週もまた、焼肉屋にお客様と行ってしまった私 は、やはり、思慮が浅い。
長年通ってきてくださっているお客様だが、2人で店が終わってから、食事に行ったのは初めてである。
しみじみと彼は言った。 『よく食うよな。これ全部ママが食べたんじゃないのか』 あの時から愛想をつかされてしまったような気がする。
今度こそ、私は反省した。 もう、お客様とは絶対焼肉屋に行かないと。
なぜ、私は焼肉を前にすると失態を演じるのか 『並べる、ひっくりかえす、口にいれる』という一連の作業の手順が機械的に完成して ロボットがせわしく動くように、私は焼肉の亡者となる。
おせっかい、せっかち、食いしん坊、もったいながり、大食いとこれだけ、私の欠点が 一度にでる作業は焼肉以外に思いあたらない。
こんな私を許してくれて、幻滅をされない方、焼肉屋に行きましょう。 |