2軒目のフィリックス、お酒もほどよく入り、気も大きくなり、交わす上司の悪口
しだいにあがるボルテージ、そして訪れる「この部署を背負っているのは自分だ」と
錯覚する瞬間。酒がもたらしてくれる至福。
「問題は会社の体質だよな」などの話題は、第三者として聞いているのは、実に、
うっとうしいものですが、話している当人にとっては、この上なく楽しく、ついつい
熱がこもってしまいます。「よし、明日こそ、さっそく役員に直訴だ」とか
「明日こそ、俺が役員に言ってやる、いや、とめるな、会社のためには、誰かが、
言わなきゃならないんだ」などの発言がとびだすこともしばしば。
しかし、大人としては、翌日になってその話題を蒸し返してはいけません。
同様に新橋の居酒屋で、1軒につき10回は飛び交っている台詞。
「あんな会社やめてやる!」も夜が明けたら、消えてなくなる運命になります。
先輩や同僚が口走る「俺は、何があっても最後までお前の味方だからな」という
頼もしい言葉も、心の支えにするのは勝手ですが、もし、裏切られたとしても、怒るの
は筋違い。酔いが醒めても記憶していること自体が、ルール違反なのです。
蛇足ですが、せっかく同僚が盛り上がっているのに、彼自身の問題点を指摘するような
発言や、「ここで言ってもしょうがないじゃん」という冷静なリアクションは、少し、
優しさに欠けます。今夜も夜の新橋、銀座界隈では、自分の限界を語るせつなさ、
やるせなさを包みながら、ちょっぴりほろ苦い酒が酌み交わされるのでありました。